1986年〜1989年作品

インディアン・サマー

今夜は帰らない

OH-NO!逢野ストーリー

 朋美には実徳(みのり)という婚約者がいた。奔放な性格の実徳は、ある日ふらりといなくなってから音沙汰がない。朋美は、許さないと思いながらも本心では彼の帰りを待っている。過疎のすすんだ逢野の村おこしに開かれる周辺地域合同夏祭りの準備が進む中、実徳が帰ってくる。あろうことか町の郵便局に強盗に入ろうとしたところを朋美が見つけたのだ。何とか実家の旅館にかくまったものの、一向に働こうとせず気ままに過ごしている実徳にあきれるばかり。おまけに借金取りは追ってくるし東京のオンナは訪ねてくるし、落書き程度に作った版画は小説家の目に留まって本になるし、実徳のまわりだけが非日常。当の本人は夜中に抜け出しては逢野の霊山・早峰山を散策している。「この山の樹々には魂が宿っている。動物とは意志が通じ、UFOが飛来し、人も森に同化する…」そう静かに語る実徳には何が見えているのか…。

河さんの好きな東北の風土や文化をベースに描かれた、ちょっと神秘的なラブストーリー。

PIETA−遠い夜の腕(かいな) 

 父が出所するという知らせが克巳に届けられたのは、父が母を絞殺したあの事件から12年目のことだった。あの頃、母はいつも怒っていた。生まれた時から病弱だった克巳の世話でノイローゼになった、その時の記憶が甦るせいだと聞かされた。小学生に成長した克巳を叱りつけ、暴力を振るい、父親のようになるなと言い続けた。
 父はもの静かで絵画を愛する人だった。その父といっしょに見た画集の写真。ミケランジェロのピエタ像が、死んでしまった息子を抱き嘆き悲しむ母親の姿だと聞かされても、克巳は気持ち悪いと父に言った。他に何か違う感情がありはしたが、うまく言い表せずにいた。やがて父は、感情的になる母の顔色を伺って暮らすことに疲れ、外に愛人を作って出ていく。その父と会ったことを知った母は、克巳を殺そうとする。裏切られたという思いと、体調を崩しては手間がかかる苛々が高じてのことだった。首を絞められながら、克巳の脳裏にはあのピエタ像が浮かぶ。戻ってきた父にかろうじて助けられた克巳は、それでもそれからの12年間、一度も父の面会には行かなかった。出所の日、事故で入院した妹・綾の代わりに父を迎えに行った克巳は、今もなお母を悪く言う父に、ピエタ像をうらやましく思っていたと告げる。どんなに迫害されても好きだった母親に、本当は殺してほしかったのだと、死んで抱かれたかったのだと…。

うぬぼれ指数

 私・奈津子は結婚5年目の27歳。毎日かいがいしく夫に尽くし、完璧な主婦業をこなしている。それなのにあの人ときたら、感謝のかけらも見せない上に髪形を変えても気付かない朴念仁。ばかばかしくなっちゃったところに、偶然再会した同僚・佳恵さんに誘われて別居することにした。ちょっとは妻のありがたさを思い知ればいいんだわ。
 ところがいっしょに住みだした佳恵さんはマイペースで、家事を一切しない人。ちょっと様子を見に、もとの家に帰ってみれば、ダンナは風邪をひいて会社を休んでるって言うじゃない。なんだか世話が倍に増えたような気がするわ。ケンカした佳恵さんと彼女のダンナとの仲をとりもってあげようとしてるのに、佳恵さんには勘違いのヤキモチで、逆にあたられる始末。相談にのっているうちに佳恵さんのダンナさんに言い寄られちゃって、私どうしましょう。この人もホントの夫も、私がいなくちゃダメなのよね…。

ソルティ・ムーン

 由美ちゃんと誠クンは結婚したばかりのカップル。ハネムーンに訪れた海岸で、ベタベタな時を過ごす…ハズだった。ロマンティックが足りない誠クンの態度にスネて、ひとり早朝の海岸を散歩していた由美ちゃんは、小麦色に日焼けした肉体派の男性に出会う。誠クンとは正反対の、理想のタイプ!すっかりもりあがってしまった由美ちゃんは、真夏の海岸を歩き回って彼を探す。夜になってようやく再会した彼と、誠クンを無視してデート。その間、軽くてセコい誠クンは悩み抜いた末、離婚まで考えていた。うきうきと帰ってきた由美ちゃんと口論のあげく、理想の人じゃないとまで言われたところで、ホテルの火災報知器が高らかに鳴り響く。動揺する由美ちゃんの目に、てきぱきと動く誠クンはとてもたくましく、理想の人に見えた。
 …結局もとのサヤにおさまった二人は、いっそうベタベタになってビーチをあとにするのだった。

ビギナーズラック

TOKI草紙

 フリーライターの野村あゆみに、はじめて大きな仕事が入った。佐渡のトキについて読み物をまとめるというものだ。カメラマンで恋人の永島は結婚を望んでいるけれど、仕事を半人前のまま辞めたくはないと突っぱねている。佐渡に同行するハズだった永島が寝過ごして、余った乗車券は軽薄そうな男に譲ってやることになった。現金の持ちあわせがないという彼と宿までご一緒。何だかんだと言い寄ってくる男を適当にあしらっていたら、永島が追いかけてきた。ところが永島はカメラも持たず、何をしに来たのかわからない。昼まで寝ている彼をおいて、翌日あゆみと男はトキ保護センターに向かう。滅び行く美しい鳥を伝説と郷愁で彩り、きれいな文章でまとめるつもりでいたあゆみは、トキのおかれている現実を目の当たりにして複雑な思いにかわれる。絶滅していく理由、その種を保存するための他の種の犠牲。取材を終え、考え込むたあゆみを、男が執拗に追いまわす。迎えに来た永島に助けられたものの、宿に帰ってみるとあの男が結婚詐欺師だったことが判明する。御用となった男をおいて、あゆみは一人フェリーで帰路につく。トキのことを考えながら。そして別れ際の永島のことばを反芻しながら…。

ONI紀行

 かけだしのフリーライター・あゆみと、新米カメラマンの永島は、結婚を約束したカップル。だけどお互い忙しさですれちがいの日々が続き、ゆっくり会う時間も持てない。やっと手に入れた1週間の休み、徹夜あけの永島とふたたび佐渡に向かう。新幹線で知りあった美女にデレデレしている永島に反発しながら、前回お世話になった民宿に向かう。
 折しも村では祭りの最中。獅子と鬼の舞いを見物に行く。はじめて見る土着風土の激しい舞いに刺激を受けて眠れずにいると、昼間の美女が闇に紛れて出ていくのを見た。どうも舞手の鬼と会っているらしい。翌日祭りの宴会で仲よくなった村の人々と話していると、例の美女が飛び込んできた。鬼舞いの彼が奥さんと別れたと聞いて気持ちが揺れている様子。詳しく聞いてみると、幼いころ島を離れてからも文通を続けていた彼が勝手に結婚してしまった腹いせに、祭りにかこつけて誘惑しに来たという。鬼になっていたのは美女の方だった。
 あゆみと永島の間は変わらないけれど、ひととき感じた時間の流れを心に留め、ゆとりを感じながら二人はもとの生活に戻るのだった。

ふきげんな系譜

4月のサカナたち

きらきら星の国

 理子(さとこ)は作曲家の武蔵と、その息子の勇が住んでいる山奥の小屋に辿り着いた。追い返そうとする武蔵に反発し、理子は強引に居候を決め込み、虫や蛇が襲い来る中、家事を手伝っていた。朝目覚めてみると武蔵がいなくなっていた。武蔵は小屋を作るときの事故がもとで、今でも記憶が一部欠落しているのだという。勇は平然としているが、理子としては静かすぎる夜をひとりで過ごす勇を不憫に感じずにはいられない。満天の星を見上げ、理子に向かって「きらきら星」とつぶやく勇。けれど、理子にその真意はわからない。翌朝武蔵が帰って来、勇は安心して学校に出かけていった。勇の部屋には、理子と同じ顔の女性の写真が大事そうにしまわれていた。
 その夜は嵐になった。増水した川を見に行き崖から転落した武蔵を、理子と勇が助け出す。気づいた武蔵と勇に理子は、自分が病死した勇の母親の妹だと告げる。両親も心配しているし、今回のような緊急の事態が起こらないうちに街につれて帰るという理子に、勇は今の生活がいいと自ら選択する。
 ひとり山を降りた理子はもとの生活に戻ったが、街の空気の重苦しさを感じる。星も見えない空を見上げ、山の生活を振り返ったとき、勇からの便りが届く。今度行ったらきらきら星を演奏してくれるという。「きっときっときてくださいね。待っています。」と結んである手紙に心動かされ、理子は山に戻る決心をする。かわいい甥っ子からの手紙は、理子にとってかけがえのない演奏会の招待状なのだった。

千里の道も五十歩百歩

 中村花苗は大学生。高校生の妹・礼美がレベルの高い大学を受けると言い出した。頼んだ家庭教師は花苗が高校時代つきあって別れたオトコの弟・浅利一歩(かずほ)。礼美は先生が気に入ったらしく勉強をする気になっているが、一歩も勉強は苦手らしい。教えていることはめちゃくちゃで、花苗がお目付け役としてついていないとどうなるかわかったもんじゃない。家業の洋食屋さんの手伝いをしながら勉強にも参加する花苗。一歩は中村家に足しげく通ううち、慣用句もことわざも勉強の仕方もよく知っている花苗に惹かれていく。飲みに誘ったりして積極的にアプローチ。ところが花苗は、別れたオトコの弟でしかも3つも年下なんて冗談じゃないと反発する。一方礼美は、一歩の兄・千里と花苗のよりを戻そうと画策。気分転換と称して花苗をピクニックに誘い出し、浅利兄弟とダブルデートを目論んだ。ところが男前の兄・千里に一目惚れ。なんだか女の子としても目覚めてしまったような…。言葉遣いが変わり、身だしなみに気を配るようになった礼美と千里はうまくまとまったみたい。一歩と花苗も洋食やさんでハツラツ働きながら、親公認のおつきあいがはじまるのだった。

きょうだけの人生

 統くんは正真正銘、本職の泥棒。ある日、雨宿りした店先で寸借詐欺にあった。相手は美女。どうも見覚えがある顔だと思ったら、いつも一仕事終えてから寝顔を拝みに行く部屋の住人だった。彼女の名前は奈央子。憧れのマドンナがケチな詐欺師だったなんて、統くんはショックを隠せない。忍び込んだ彼女の部屋でひとしきり悪態をついた翌日、街で見かけた彼女はまたしても宝石店で稼業にいそしんでいた。いがみあいながら何となく共同戦線をはるふたり。ある日いつもようにひと稼ぎしてきた統くんの荷物の中に興信所の調査報告が紛れ込んでいた。それをネタにゆすりを画策した奈央子は、逆にヤバそうな興信所職員からつるしあげを食うハメに…。統くんの助けは間に合うのか?奈央子の運命やいかに?
「窓からこんばんは」の統くんが活躍するシリーズ番外編。

山にはカラス

今夜のメニューは?

 祥美と真人は新婚夫婦。今日から真人の母親・幸代さんと同居がはじまる。幸代さんは仕事をしながら女手ひとつで真人を育て上げた若き未亡人。祥美は朝からゴージャスな朝食を作って真人を送り出した後、起きてきた幸代さんに真人はトーストやお茶漬けなどの簡単なものが好きで、部屋は適当に散らかっていたほうがいいという。ところが数日後、トースト続きの朝食に飽きた真人から、手の込んだ家庭料理は大好きだし部屋も整頓されている方が好き。だが忙しい母親に苦手なことを望むのは気が引けて、幼いころから気を遣っていたのだという。
 真人に反対されながらも幸代さんのお店で働くことになった祥美は、幸代さんが手の込んだおいしい料理を作るシェフだと知らされる。互いに思い違いをしている親子の間に立って、祥美は幸代さんの味を真人に食べさせてあげたいと思う。
 レストランから帰った祥美は、慣れない仕事のため鍋を火にかけたままうたたねをしてしまう。帰宅した真人に「仕事に出たら家のことはないがしろにされる。母親を見ていたからよくわかる」と怒鳴られ「お店での幸代さんを見もせずにダメな母親だとは言えない」と反論する祥美。仕事からもどった母親が握ってくれたおにぎりに愛情とキャリアを感じた真人は、翌日幸代の勤めるレストランに足を運ぶ。そこで楽しそうに働く祥美と母親の意外な腕前に感嘆し、祥美の仕事や母親への不満を撤回するのだった。

二重想

 キヨシは過去の記憶を失ったまま、大企業の後継者として塔村家の当主の座にいた。
自分は本当は何者なのか?
身に付いた塔村聖(キヨシ)のクセ、習慣。見覚えのある屋敷。これはオレの記憶なのか、それとも誰かに植え付けられたものなのか。
かいがいしく接する美しい妻と昔なじみの医師。疑いの目を隠そうともしない強欲な親戚たち。
この家がオレの家なのだと思うもう一方で、懐かしい女性の声が聞こえる。彼女のことを、オレはよく知っている。
いったいオレは誰なのか…。
欲望渦巻く豪邸で翻弄される男の不安が、じわじわと迫るサイコストーリー。

かけひき上手のパートナー

ONE DAY

素敵な春の過ごし方

あれは雨の音?

なきたい時間

微笑みはイミテーション

今では青い目になっちゃって

真夜中のベール

海より深く…

Tell Me -輝美-

ブレッド&バター

家族のパロディ

三角形の二辺の和

シンデレラ戦争

Grey Forest

 都会の空気に圧迫されながら働いていた槙人は、原因不明の体調不良で退職、兄夫婦のいる田舎に帰ってきた。歓迎されないながらも、他に頼るあてもなく、日々をただ漠然と送る槙人。小学生の頃遊んだ森を散策するうち、昔見たあばら家を思い出す。どこにあったのか…。そこで何があったのか…?記憶の欠落と頭痛、手足のしびれ、不可解な現象…。しかし、不穏な空気を感じながら探し当てたその小屋の中で、槙人はこれまでにないほどすっきりとした気分を味わう。そんな槙人を訪ねて現れる、街での恋人・美生子、映画を撮りたいとロケハンにやってきた友人たち。彼女らもまた、深い思念の陰に取り込まれていく…。

 怨の強い力に導かれ、封印された過去のただ中に入り込んでゆく長編ホラーミステリー。

気分はYUTORI

夢の過程

はあと☆ぼいるど

生きていく理由

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