1992年〜1999年作品

スノウマンの手紙

 大学生の克己のもとに、実家の母親から手紙が届く。同封されていた雪だるまのテレホンカード。どこかで同じようなカードを見たことがある。ずっと以前、まだ幼い頃に…。おぼろげな思い出に重なるのは、パブで知り合った年上の女性、木実子。知り合ってからたびたび克己にちょっかいをだし、アパートにも押しかけて来る木実子。酒のサカナに、愚痴ともつかない自分の生い立ちを語る。16歳で男と上京し、妊娠し、捨てられ、体を壊してもひとりで必死になって生きてきた…。自棄に見える生き方に振り回されながらも、克己は彼女に親しみを感じる。木実子は母親が昔捨てた、克己の実の姉だった。
 再婚した母親の新しい家庭に馴染めなかった克己、親に捨てられた傷を抱えたまま救われずにいる木実子。ふたりは生まれた地、北の町に行ってみようと列車に乗る。故郷の白い雪を夢見ながら、木実子は静かに眠りにつく…。

あの街に還りたい

 内気で幼い頃から人とのつきあいが下手な萌(めぐむ)は、ヒステリックな母や小心な父、優等生の姉の間で不満に満ちた生活を強いられていた。いつの頃からか夢の中の決まった公園、決まった少年と過ごす時間を、心に守り続けるようになる。現実の世界は私には苦痛なだけ。夢の中の、あの子といっしょにいる時間だけがあればいい…。そう思い続けながら、夢の中の少年とともに萌は成長してゆく。友人も作らず、家族にも打ち解けないまま社会へ出た萌は、同期の男性にプロポーズされる。「私がいっしょにいたい人はあなたじゃない。ここは私のいたい世界じゃない。」と言い置いてタクシーに乗った萌は、自分が夢と割り切っているつもりでいたあの世界を現実の中に探し求めていたのだと気づく。
 やがてタクシーが停まったのは、彼女が長い間現実に訪れたいと思っていた場所だった。ここで、ずっと憧れていた生活ができる。彼がいる平凡な日常…。そのあふれるような幸せの中で夢を見た。現実から目を背け、夢の中に逃げ込んでいる自分がいる。ちゃんと見据えなければいけなかった、自分の本当の世界…。
 過ちに気づいた萌が現実の世界に戻ったとき、今まで見えなかったものが鮮やかに見えるようになった。家族の愛情も、プロポーズしてくれたあの人の顔も。それは、萌がずっと望んでいたものだった…。

雨の音でおやすみ

 両親が7年前に離婚し、小学生の祐人は父親にひきとられた。しかし父親は夜遊びで帰ってこず、母親がわりで誰よりも好きだった祐おばあちゃんが死んでしまった。ひとりになった祐人は、おばあちゃんが生前、一度だけつれてきてくれた母親の家に行く。しかしお母さんは迷惑そうな顔で祐人を追い返す。祐人はピアノ教室に出かける義理の妹、晴香を誘い、森の中に入る。この子がいなければお母さんはあんな冷たい態度をとらなかったと思ったからだ。祐人はかくれんぼと偽り、投棄してある古い冷蔵庫の中に晴香を閉じ込める。このままここで死んでしまっても、誰も気がつきはしない。暗い思いに囚われた祐人だったが、遠くに聞こえるパトカーのサイレンに恐ろしくなり、冷蔵庫のドアを開ける。祐人の心中も知らず無邪気に笑う晴香は、祐人について歩く。やがて打ち解けていっしょに遊ぶうちに雨が降り出した。おばあちゃんが死んだのも雨の夜だった。父親が戻らず、冷たくなっていくおばあちゃんをひとりで見ていたときの淋しさ、恐ろしさが蘇る。そんな祐人に晴香は、お母さんのかわりだと言って頭をなでてくれるのだった。
その頃祐人の父親のもとに、母親が夫をつれて押しかけていた。祐人が晴香を連れ出したのを見ていた人がいて、心配してやってきたのだ。警察に届けようとする母親の前に、晴香をおぶった祐人が帰ってくる。雨にぬれて熱を出した晴香を見て激高し、祐人と父親を責める母親。言い争うふたりの間に入って祐人は、いなくなればいいのは晴香でもお母さんでもなく、自分だったと言う。自分がおばあちゃんのところに行けば、ひとりでいる寂しさも怖さも感じなくていい。そう言って涙する祐人を、目をさました晴香が「間違っているのはお母さん。晴香は祐人ちゃんと遊びたかったからいっしょに行ったんだ」となだめる。晴香の父親は穏やかに、晴香をいたわってくれた祐人に感謝し、いつでも遊びにおいでと言ってくれた。諍いと孤独の中で荒んだ祐人の心は、両親以外の人の手によって、ようやくぬくもりにふれたのだった。

ホームビデオ

碧色の童子

 水奈の18歳の誕生日、すばるははじめて彼女の家を訪れた。同じ岩手県出身という水奈の父親・菊池とすばるは、互いに面識があるような気がしてならない。すばるは水奈とも、初対面の時から親しみを感じ、誰にも感じたことのない深い愛情を抱いていた。週末、水奈の薦めで遠野を旅するふたり。湖からのびる銀河鉄道、天の河を仰ぎながら「同じ切符でいっしょに旅立とう」と水奈は言う。「すばると岩手へ行く」との置き手紙を見た菊池は、急ぎ北へ車を走らせていた。すばると会ってからつきまとう不安。20年も前に死んだ者に怯えるなどばかばかしいと自嘲しながら、疎遠にしていた故郷に向かう…。
 民話の故郷遠野で、ザシキワラシ、カッパ、姥捨ての諸説を語りながら、突き詰められていくすばるの過去、菊池の過去、そして水奈の真意…。
 河先生の遠野への思いが熱く伝わる、珠玉のファンタジックミステリー。

しじまの雪

クリスタル・メモリー

 書道の先生をしている咲子は二児の母。高校時代の同級生・岳志(たけし)とその父親と5人で暮らしている。
 2年前義母が亡くなってから、義父に痴呆症状が現れだした。書道教室と自分自身の稽古、2人の子どもを見ながらの義父の世話。徘徊やボヤ騒ぎ、家庭内の暴力と、エスカレートする義父の行動に振り回され、日に日に疲れを増し、イライラもつのってゆく。
 そんな中、ふいに舞い込んだ同窓会の通知が、咲子の心を希望に輝いていた高校時代に引き戻す。幸せだった日々、きらめく未来を夢見ていた過去に思いを馳せる咲子。
疲れきった現実に、苦々しい思いを感じていたある日、義父が心臓発作で倒れ入院、間もなく「カエリタイ」という言葉を咲子に残して他界する。…お義父さんはどこに帰りたかったのだろう?お義父さんのいちばん輝いていた思い出は…?老いて、あんな余生を送る身となった義父にも、還りたい幸福な時代があったのだ。亡き義父の求めていたものを思い返す咲子に、彼女を陰から見守っていた夫・岳志がそっとねぎらいの言葉をかける。その言葉に咲子は、はじめて救われる思いがするのだった。

白鳥の聲

 兄の結婚で隆二と縁続きになった奈樹(なぎ)は、野鳥を見る趣味を続けるために、定職に就かずアルバイトで身を立てる自由な女性だった。なかなか連絡のつかない奈樹の様子を見がてら、義姉からの差し入れを届けた隆二は、幾分排他的に見える彼女の夢を知らされる。「陽が昇る頃の、オオハクチョウの群れを見たい」。そう語る奈樹は希望に輝いて見えた。
 しかし数ヶ月後再会した彼女は、異様なほどにやつれていた。姉の前では何事もないように振る舞っていた奈樹だったが、泊まっていけばいいというみんなの声を振り切って帰ってしまう。姉の強い希望により、義兄の勤める病院で検査を受けるが、結果が思わしくなく手術をすすめられる。姉に余計な面倒をかけたくないと入院を拒絶し、奔放な生き方を変えようとしない奈樹。見かねた隆二は、車で白鳥のいる湖へ行こうと誘う。その道すがら、自分が亡くなった父の体質を受け継いでいると話す奈樹。そして、やがて自分も同じ症状で死んでいくのだと…。
 湖に到着し、夜明けの白鳥を並んで見入る奈樹に隆二は、生きて来年もまた白鳥を見に来ようと語りかける。その優しさに奈樹は、これまでにない笑みで応えるのだった。

公園通りのハト

 住宅地にある公園には、たくさんのハトが集まってくる。そして同じようにたくさんのヒトも。
 よけい者扱いされる老人、就職難に悩む女子大生、ガールフレンドとうまくいかない青年、働きに出ている母親を待つ男の子…。
 ヒトに食べ物を与えてもらい、厚かましく生きるハトにもそれなりの社会がある。たくましく生きるハトの姿に自らの姿を重ね合わせ、前向きに生きていこうとする人々の、様々な人間模様がここにある…。

つれていって

 写真家の島岡は、取材旅行中に家に残していたひとり娘、ちろ(ちどり)を事故で亡くして半年。傷心の毎日を忙しさで紛らわしていた。取材に出ようとしたある日、ちろの声を聞いた気がして覗いた娘の部屋で、1冊のノートを見つける。母親がいないマンションの部屋で、留守がちな父親の帰りを待つあいだ、語りかけるように独り言を書き綴ったちろのノートだった。寂しい思いがつまったそのノートを、ちろのかわりに仕事場につれていく島岡。いつしかその目には自分についてまわる、生き生きとしたちろの姿が見えるようになっていた。次第に活気を取り戻していく島岡の姿を、死んだ妻の妹、美佐子が見守っていた。義兄の言動に不思議な思いを感じた美佐子は、ちろと海を見に行くと言う島岡に同行する。千鳥が群れ飛ぶ波打ち際で、ちろへの罪悪感を忘れるように話す美佐子。ずっと島岡を慕っていた、目の前の現実を見てほしいと言う美佐子を抱きしめた時、島岡から離れなかったちろの声が浜の千鳥の鳴き声に紛れ消えていく。そして島岡は、ちろを離さなかったのは自分が置いていかれたくなかったためと知るのだった。

ボクの歌はキミのもの

いついつ出やる

 若くして結婚したひさみは、これまでずっと家庭を大切に守ってきた。けれどもその思いを知らず、大学受験に失敗した息子はただふてくされている。その息子にも無関心に見える夫。そしてマイペースの娘に、何が楽しくて生きてるのかと問われるまでもなく、自分が生き甲斐をなくしていることにひさみは気付いていた。束縛される事に慣れ、考える事をやめてしまっていた自分。当たり前に思っていた生活を息苦しく感じたとき、その鳥カゴから出ることを考えていた。家を飛び出した息子が心配で眠れない夜、無口な夫に誘われて飲んだ酒の勢いで、自分の気持ちを吐露してしまうひさみ。それがきっかけで夫の本心も、娘の思いも見えた朝、息子から連絡が入る。エリート意識の強かった彼が、世間の情けに触れて帰ってきた。それぞれが自分の気持ちを語らなかった家庭の中で自分を縛っていたカゴが、今消えていく。ひさみはその気になれば、いつでも自らの羽根で翔ぶことができると気付くのだった。

日曜日のテーブル

 平均的サラリーマン家庭の天守(あまもり)家は、長女しずくを除いて野郎5人の男所帯。母親が他界してから家の中をきりまわしてきたしずくが、このたび突如海外赴任の決まった婚約者と共に家を出ることになった。娘のしあわせのためと理解を示し、一家の太陽を快く送りだしたものの、満足に食事すら作れないお父さん。長男はじめはさっさと見切りをつけて家を出、中学生のふたごはみずから汚し続ける家に順応してゆく。ゴミが散乱して悪臭を放ち、庭には雑草が生い茂り、荒れ果てていく天守邸…。
 次男で高校生の康二は、マイペースで家中の混乱もテキトーに見過ごしてきた。ところがある土曜日、クラスの女の子に家事の手伝いをしたいと提案され真っ青になる。
 「あんな家、絶対見せられない!」我に返って家中を見渡してみると、そこはすでに人間の住む場所ではなかった。さらに父親の部屋がダニの巣窟になっていることに気付いた康二は、にわかに清潔モードに切り替わる。
人間らしさを取り戻すべく、父親も弟も、そしていつの間にか帰ってきていた長男も巻き込んで、夜を徹しての大掃除がはじまる。

ホーリーナイト

 13才までを孤児院で育ったイサムは、父親を看取った後ひとりで暮らしている。そんな生活の中、父親が可愛がっていた野良猫だけが、イサムの部屋を訪れる唯一の存在だった。きちんと父親の納骨をしてやりたくて、父が昔捨てた故郷を訪ね宛てたイサムだったが、親戚たちには邪険にされただけ。まるで父の、そして自分の存在すら否定されたかのように感じてしまう。やりきれない気持ちを猫にぶつけたイサムは、飛び出していった猫を追って、クリスマスの夜の街に出る。
 尚子もまた、毎晩ふらりと入ってくる野良猫に話しかけ、孤独をまぎらわせる毎日を送っていた。家庭料理を教えてくれる人もなく、寂しさからあの孤児院での生活が思い出されてしまう。クリスマスににぎわう街を見ると、以前施設で偽善の象徴のようなプレゼントを嫌っていた友だちを思い出す。仲間の輪に入って行けない自分を、さりげなく気にかけてくれた男の子。「心のこもったプレゼントをあげよう」と考えていた矢先、父親にひきとられていってしまい、今は所在も知れない。
 クリスマスの喧騒に背をむけて帰ってきた尚子は、路上でいつもの猫に会う。またひとり置いていかれる不安を感じ、走り去る猫を追っていく。公園の近くで聞こえる猫の声が自分の名を呼んでいるように聞こえ、導かれて行ったそこには、なつかしい人が立っていた。ずっと会いたいと思っていた男の子、イサム。
それは、心まで凍える冬の夜に、猫がくれたあたたかい贈り物だった。

春風のこども

 大学生の息子、光留(みつる)が「結婚したい」と言って連れてきた女性、春花(はるか)には5才の子供、大河(たいが)がいた。いきなりの展開に両親は猛反対。父親は息子に無理解を指摘され、逆上して勘当まで言い渡してしまう。
 ある日の午後、母親は幼稚園帰りの大河に偶然出会う。仕事が大変な春花を気づかう大河を実家に連れて帰り、ふれあうほどに情を移していく。頑固な父親もまた、やがて大河のペースにはまっていく。そしてふたりは、まだ子供にしか見えなかった息子が、立派に大河の父親になっていると感じるのだった。両親と春花たちが互いの家を行き来するようになった頃、春花の3年前別れた夫が復縁を要求してくる。いろいろ考えた挙げ句、復縁も光留との再婚もしないと言う春花に、母親は憤りをあらわにする。光留の気持ちを考えずに、勝手に結論を出すな。時間をかけて私達に認めさせることが光留の望んでいることじゃないのか、と…。
そうして息子の望む幸せの形を、両親は見守ることになる。そこまで来ている春の気配を感じながら。

しんきろうの家

 酔いつぶれて終電に乗りそびれた会社員を、実穂は彼女の家につれていく。そこにはおじいさん、おばあさんと実穂の3才の娘、みくがいた。あたたかい朝食と団欒に心がなごむ。崩壊寸前の現実から逃げるようにその家にいりびたる男を、おじいさんは自分の息子の名で呼び、みくは「パパ」と呼ぶ。本来の家庭では味わえない、おだやかな時間を感じる「パパ」。ところがある寒い朝、ジョギングの最中におじいさんが倒れ、入院してしまう。そこではじめて「パパ」は、彼らがみんな他人だと知る。息子といっしょに住むのを嫌って一人暮らししていたおじいさん、痴呆のため昔住んでいたところに帰ってきてしまうおばあさん、高校生でみくを産んで家にいられなくなった実穂、みんな他人でありながら家族のように暮らしていたのだ。
 退院したおじいさんは、「もうあの家になど誰もいない」と、本当の、しかし心の通わない息子に責められながら帰っていく。淋しく冷えきった家を思いつつドアを開けたそこには、一度いなくなったはずのみんながいた。
彼らはそれぞれ、自分たちが必要とされる場所に帰ってきたのだった。

ボクのすきなせんせい

 小学校で人気がある教師のあさみ。いつも楽しげな彼女の教室をみつめるのは、大阪から転校してきたコオくんだった。コオくんはあさみと同じアパートに住む母子家庭の子。母親は水商売で夜は不在、酔って帰ってきてはコオくんに当り散らす有り様だった。夜中にひとりで遊ぶコオくんを見かねたあさみは、母親にわかるようにメッセージを残して自分の部屋で寝かせる。翌朝、登校途中間違えた靴を履きかえるためアパートに戻ったコオくんは、旅支度ででかける母親を見かけ追っていく。その日結局登校して来なかったコオくんを心配していたあさみのもとに、電話がかかってくる。ひどい雑音まじりの声とともに見えた、窓の外のコオくん…。翌日も金縛りの中、あさみはひたすら母親を探すコオくんの幻を見る。不安をつのらせるあさみの前に母親が帰ってきた。コオくんの面倒を見てくれていると思い、男と旅行に出ていたと言う。よく家出するというコオくんからの連絡を、眠らずに待つあさみと母親のもとに電話が…。

She is He?

 水流真美(つるまさみ)は、サミーという源氏名をもつクラブ亜蘭の男装ホスト。旅行会社の倒産後、この世界に入ってまだ駆け出し。会社勤めをしている頃から、女性というだけで起こるトラブルを理不尽と感じていた。ビジネスと割り切って考えれば、今の生活は以前よりずっと楽。身体はって生きている人たちと、人間としてのつきあいをしていれば男も女も関係ない。でも前の会社の深町センパイは女でいてほしがってるし、アパートの隣に住むみどりさんは男の子だと思ってるし…ちょっと複雑。
 まあ、「こんな仕事していたら友だちなくすよ」なんて言われるけど、自然体でいられるこの世界がけっこう肌にあっている。続けられる限り、たのしく働いていたいと思うサミーくんだった。

(こころ)のかたすみに

 かけだしのイラストレーター・あすかは、結婚を考えている一紀に母親代わりの女性・楓子を紹介される。若くきれいな彼女と一紀との関係をいろいろと考えしまうあすか。以前一紀とつきあっており、今もまだ気がある礼奈という女性からも、あのふたりは引き離せないと牽制される。
 事故で両親をなくした一紀の記憶の中に、母親に殺されかける映像が残っている。夢なのか現実なのかも定かではない。結局事実は霧の中だが、その記憶のせいで母親とは一線を画していたようだという。あすかには、あまりにも似ている一紀と楓子さんやふたりのつながりと、その母親の記憶が何かを意味しているように思えてならない。一方あすかの周りには、OL時代につきあったことのある男が不気味に出没する。無言電話がかかってきたり、仕事先に中傷のFAXが流されたりと、いやがらせは次第にエスカレートしていく。さらに一紀が交通事故にあったと聞いたあすかは、楓子さんに相談する。
 一紀の記憶を探るため、あすかは彼の母親の故郷を訪れる。そこで見た風景、聞いた過去に、すべての疑問が解ける。しかし今さら事実を一紀に知らせるつもりはなかった。やがてニュースが礼奈とストーカー男の事故死を報じる。
楓子さんは手段を選ばない人だった。

魔に逢うかもしれない

 紗理は同棲している恋人・ミコトの実家にいっしょに帰ることになった。彼の弟・悟からのハガキがなければ、おそらくずっと語られることのなかったミコトの家族。訪れてみると、父親とは何か隔たりがありそうに見えるものの、気さくな弟と優しそうな母親。すぐに打ち解けられたように感じる紗理だったが、たびたび見えるおじいさんの幻も気になる。翌日、母親から呼び出され外出したミコトを見送って、部屋の掃除をはじめた紗理は、はずみで床にしみついた血の跡を見つける。ミコトの父親の再婚問題からつながる事件は、近所でも穏やかでない噂となっていた。ミコトの父親に襲われそうになった紗理が逃げ込んだ部屋で、そんな事実にも動揺しない悟から10年前に起こった衝撃的な事件の全貌を聞かされる。義理の母親とミコトの関係、自殺と言われている祖父の死の真相とは…。

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