2000年〜

おとうさんの足音

 小学4年生の礼美はお父さんにベタベタされるのがうざったくなっている。帰りが遅くてずっと会わなくても寂しいと思わない。お母さんの様子がおかしいと思っていたら、お父さんとお母さんが別居することになった。礼美と弟は母の実家に行くことになった。それを話すと、クラスメイトのショウくんが、前に礼美を「好きじゃない」と言ったのはウソだから、きっといつか帰ってこいと言ってくれた。
引越しの日、見送ってくれるお父さんを見て泣いてしまう礼美。もしかしたら自分も、お父さんを好きじゃないと思っていたのは、ウソだったのかもしれないと気づき、会いに行くと約束したお父さんの足音を楽しみにするのだった。


遺された未来

 中学1年生の息子・稔が、誰にも何も言わず自殺した。中学に上ってから人が変わったように素行が悪くなった息子の、心の本質を理解しなかった家族に、深い悔恨の念がおしよせる。取り返しのつかない哀しみの中、自殺の原因が陰湿ないじめにあったと知り、母親は立ち上がる。けれど学校側も世間も、日ごろの態度から稔に問題があったとし、風当たりが冷たい。たったひとりの息子が命を捨てた理由すら追及できず、世の無常さ、理不尽さを感じるばかり。闇の中で途方に暮れていたとき、やはり娘をいじめによる自殺で亡くしたという夫婦が訪ねてきてくれた。そして同じ思いを抱く遺族が集まる会に誘われ、自分たちのこれからの闘い方を知る。
 稔は自ら未来を捨ててしまったけれど、遺された者が彼を忘れることなく彼の名誉のために力を注ぐこと、そしてわずかずつでも何かを変えていくことができれば、空白になった彼の未来が、幾らかでも埋められていくのかもしれない。


ちゅらさん

近くの他人

 お父さんが自殺して2ヶ月が過ぎた。遺された妻・由起はパートで働きながら家計をきりもりしていた。基本的にポジティヴでエネルギッシュな由起は後妻。実の子ではないものの、10年来仲良く暮らしてきたふたりの子供に余計な心配をさせまいと少なからず無理をしていた。女子高生の綾は、ひとりで勝手に死んでいった父を恨みながら、血のつながりのない母親が自分たちを置いて家を出たときのためにアルバイトに励む。中学受験を控えた諒は家計を気にして進学塾をやめてしまった。そして疲れて口数が減る由起を見るに付け、この義理の母も先に逝ってしまうのではないかと怯える。家族3人が互いを気遣いながらも、次第に気持ちがすれ違い、由起は自分がもう必要とされていないのかとショックを受ける。10年前、まだ幼い子どもたちに手を差し伸べられた日、由起は彼らに選ばれたと感じ、この相良の家に来た。そして今、他に自由な道があったとしても、先に逝ってしまった夫の分まで子どもたちとともに生きていくことを選んだのだと話す由起に、綾ははじめて自分の気持ちを打ち明ける。綾は父親の死をきっかけに、3人がより深く、新しい関係を築いていける予感を感じるのだった。


ともしびの路


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